GOINGKOBE'08 ライブレポート

今年で4年目を迎えたGOING KOBE。08年はなんとおよそ3万1千人もの来場者と、96組(TALKING KOBE含む)もの出演者を数える、西日本屈指の大型フェスティヴァルとなった(参考までに、この出演者数は国内の各音楽フェスティヴァルのなかでもトップクラス、1日のみでの数となると断トツで1位)。
神戸夙川学院大学を中心に、大阪城ホールと見間違うほどの広さをもつワールド記念ホールまでをも借り切った大規模な会場での開催も2年目。
各所いたるところで変更・改善がなされていたことに加えて、スタッフも学生を含め相当数が配置され環境整備や募金活動にもさらに力が入っており、さらに付け加えれば、フリマあり、出店あり、今年はポートライナーの記念乗車券まで販売したりと、年々、グローバルな進化をとげている。GOING KOBEは本当に神戸から全国に強く発信できるものになった。

セックスマシーンやワタナベフラワー、メガマサヒデなどのおなじみのミュージシャンに加えて、今年はスペシャルパフォーマーとして俳優の森山未來がステージに立ったり、175Rやフラワーカンパニーズ、怒髪天といった大物バンドが多数参加したりと驚くほど豪華な出演者を迎え、それぞれで心と熱のこもったライブが披露された。
そして忘れてはいけないのが、ストリートステージに出演した何10組もの地元バンドたちである。
たとえば海外の誰もが知っている超有名アーティストが多数出演するフェスティヴァルよりも、知名度は低いけれど自分の大好きなバンドが一組でも出演するフェスティヴァルのほうがよっぽど嬉しいのだ。
そしてそういうバンドが、これからの神戸を、GOING KOBEを盛り上げていくことだろう。

特にストリートステージというジャンクな場所で夕方までライブをしているということ自体がとても最高に感じる。

改めていうことでもないが、すべてボランティア運営で、出演者もノーギャラ、アシなしでの参加だ。
ステージが大きかろうが小さかろうが、全員が来たいから、歌いたいからの一心でそこに集い、ときに大合唱が巻き起こる。
とりわけ、ヘッドライナーのガガガSPのアンコールのアンコールでコザック前田がマイク一本で『弱男』を歌いだした途端に、会場中が大合唱になった場面は鳥肌ものだった。このGOING KOBEのとんでもなくすばらしいところは、いくら規模が大きくなろうと、人が大勢集まろうと、決して手づくり感が失われずに「あたたかい」ところだ。

今年は新潟県中越沖地震の被災者に寄付される募金の額も昨年から倍増。
売り上げが運営費に充てられるGOING KOBEグッズの販売ブースには、Tシャツなどを求めて開場時から長蛇の列ができるなど、第三者にオーガナイズされたもののなかには決して生まれない、観客まで含めた当事者同士が作り上げていくエネルギーであふれかえっている。

そして毎年、「なんていいフェスなんだ、来年も絶対に来よう」と思うのだが、実行委員長の松原氏のすばらしさの前に、それ以外のことばが浮かばない。
GOING KOBEとは、大きなライブハウスだ。愛と熱意と人間臭さが詰まったあの高架下のライブハウスそのままの雰囲気が、GOING KOBEにはある。

ガガガSPにセクマシ・モーリー、メガちゃんを加えた人間臭すぎる6人組・ガガガDXでの『にんげんていいな』ほど美しいものはなく、その後の勢いでやった予定外のDX名義での新曲『一瞬で』ほど痛快なものはない。
LOVE&PEACE&FREEDOM。GOING KOBEに関わるすべてのなかで、たとえなにかがひとつかけても、このイベントは成り立たない。

それは、僕たちにも言えることだ。
オーディエンスは当然5年目、6年目を今から期待しているはずだ。約3万1千人の参加者全員が、自分たちの力で来年も再来年もさらにいいイベントにしていきたいと願っているだろう。
実行委員長の松原氏をはじめ、ボランティア・スタッフの方々、観客を含めたすべての関係者の皆様に感謝の気持ちを、ここに込めて……。

ビジュアルアーツ専門学校 イケダタカミツ

JUNGLE★LIFE Vol.127掲載
GOING KOBE'08 LIVE REPORT

阪神淡路大震災に際して全国から寄せられた復興支援に対し、チャリティーで恩返しを…という想いから、入場料無料ただし会場内の募金にご協力を…というスタイルで開催されているGOING KOBEは、今年4年目を迎えた。年々、動員数が上がり続け今回の総動員数は約3万1000人だったという。毎年“チャリティー”で開催しているということは、スタッフや関係者はもちろん出演者も全てボランティアで参加し、来場者の募金が翌年に繋がっていくからこそ成り立っている…その背景に溢れていたものは、計算式では決して答えが出ることのない感情だった。

心意気に突き動かされるように成立した1日

GW真っ只中、絶好の行楽日和だったその日。通勤電車並みの満員電車に揺られて三宮駅にたどり着いた瞬間、1通のメールが届く。「お客さんの意気込みハンパないです!!」…送り主は、ポートライナー乗り場で待ち合わせをしていた本誌スタッフ。何事かと急ぎ足で乗り場へと向かうと、そこには切符売場に溢れる人、人、人…明らかにこれから向かう場所は同じだと思われる服装に持ち物の人、人、人…その中でお互いを見つけるなり出た言葉は「おはよう」でも「おつかれ〜」でもなく「…ハンパない…」。正直、予想をはるかに超えた朝の光景だったのだ。
今回の会場は、前回同様ポートアイランドにあるワールド記念ホールと神戸夙川学院大学。ステージは徒歩数分の距離にある2つの場所を有効に使用し、室内だけではなく野外も含めて11か所。それぞれの会場で何組かのライブが終了したあと、ワールド記念ホールと神戸夙川学院大学アリーナでは、このイベントの実行委員長である神戸STAR CLUB店長・松原裕がステージに立ち挨拶をした。このイベントを開催する意味、そこにかけた想いをまるで友達に語るかのように話した松原がそれまでの言葉全てを噛みしめるようにこう言った…「2000人以上の関係者がいて、このイベントは成り立っています。だからこそ、成功させて恩返しがしたい!」感極まったような声で届いたその心意気は、その場にいた人々にとって、どんな言葉よりも、どんな文章よりも、マナーを守ってこの1日を楽しむことに想像以上の意味があるということを伝えるものだった。その心意気は参加アーティストだって受け止めている。ラインナップに兵庫県出身の俳優・森山未來が並び、その日だけのパフォーマンスを披露したこともそのひとつだろうし、多くのアーティストが見せた数々の印象的な光景もそう。
Natural Punch Drunkerは、しっとりと歌い上げた直後に募金の呼びかけに絡めて「こんなにアグレッシブな募金隊がいるのも珍しい(笑)」と一言。今回の当日募金額が昨年の約倍額だったことの要因には、ある種のプロ意識すら感じさせるほどの募金隊の姿勢も関係しているのだと思う。そして、今回初参加となるフラワーカンパニーズ…「生きててよかった そんな夜を探してる」と歌う『深夜高速』。感情的な声と冷静な演奏がサビに向けて激情的に重なりだし、その場に染み渡っていくような感覚。それがどうにもたまらず密かに泣いた。もちろん野外や学内の食堂でもライブは繰り広げられ、その場で演奏することをアーティスト自身が思いっきり楽しみながら、通りかかった人をも巻き込んでいくという光景も多く目にした。
すっかり日も暮れ、各ステージはトリヘと向かう。KSGU STAGEのトリは!WAGERO! 。SHOWと呼ぶにふさわしいような空間を短時間で生みだし、「いっぱい笑って、キレイな大きな花を咲かせていきましょう! 神戸!! 」という一言であっという間に最後の曲に入った瞬間、観客だけではなく、PAブースの中までもが躍りだしていた。その真後ろから見た逆光の背中越しのステージは、あまりにも美しい景色で、その根底にあるイベントそのものの心意気をここでも感じていた。いよいよ本当の最後、WORLD STAGEではイベント自体の大トリを飾るガガガSPが登場。神戸の活性化にも繋げたいというイベントの最後、佇まいそのものが象徴的に感じるほどの存在感とメッセージ性。「夏じゃないのに夏のような匂いがします。あなた方が今日をしんどいと思ったときに、あなた方が明日へ向かえるような歌を歌いたいと思います。」と『線香花火』を歌い始めた瞬間に上へと伸びた無数の手を思うだけで、しばらくは前を向いていられるような気がした。
想いをもった人間が集うということ…もしかしたら、そのひとつひとつはちっぽけなのかもしれない。もしかしたら、昨日の夜はただの呑んだくれだった人も、徹夜仕事を終えてきた人も、納得のいかないことに負けそうで眠れない夜を過ごした人もいるかもしれない。人の数だけの“もしかしたら”は人の数だけの違った時間で、人の数だけの想いとともにその場所へ集う。それが交錯してひとつのモノが創り出されるとき…そこにはどんな計算式でも決して出すことはできないであろう、人の数とイコールではない大きくてあたたかな感情が渦巻くのだと思った。

TEXT : ema iwata

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